
宝石や宝玉にまつわるトピックスを物語仕立てで載せています。
物語に登場する人物、店舗・施設は架空のもので実在のものとは関係ありません。
各ページで出てきた宝石・宝玉に関する知識は雑学として掲載しています。
掲載履歴
- 宝石と宝玉の宝箱 第4話 投稿日: 26/05/17
- 宝石と宝玉の宝箱 第3話 投稿日: 26/05/17
- 宝石と宝玉の宝箱 第2話 投稿日: 26/05/16
- 宝石と宝玉の宝箱 第1話 投稿日: 26/05/16

宝石や宝玉にまつわるトピックスを物語仕立てで載せています。
物語に登場する人物、店舗・施設は架空のもので実在のものとは関係ありません。
各ページで出てきた宝石・宝玉に関する知識は雑学として掲載しています。
掲載履歴
4月 桜の季節とピンクダイヤモンド ~ 第4話

藤次郎は衣笠山にもほど近い平野神社を散歩していた。
「枝垂桜ももうすぐ満開やなあ」 京都にも桜の季節がきました。
桜は日本を代表する花のように言われてますが、日本で「花は桜」とイメージされるようになったのは平安時代以降。奈良時代は梅こそ愛でる花でした。古今和歌集が編纂された頃には花といえば桜が和歌に詠まれるようになりましたが、現代の桜の代表であるソメイヨシノは江戸時代以降のもの。
2025年に“京都人の密かな愉しみ“というTV番組(NHK)で定期化して流れるようになった ”Rouge”編 でも桜のシーンで山桜や枝垂れ桜がでてくるのは京都らしい。
京都を舞台にしてるからと言って、でてくる俳優さんが全部京都人というわけやない。
でも太秦で長年仕事している俳優さんもいてるので、京都弁がうまい俳優さんもいらっしゃる。
大阪の俳優さんもいろいろ出ているが、そのほうが大阪弁が身についているので苦労が多いのとちゃうやろうか しらんけど。
京都はいろいろな桜があり3月の下旬から4月下旬まで咲き乱れるのが楽しみのひとつ。
一番遅いのは、仁和寺の御室桜であろうか。
「わたしゃお多福 御室の桜 はなが低うても 人が好く」
と歌にもなっている。
藤次郎は、手が届くところで花が咲き、色白のきれいなこの桜を特に好んでいる。
「ソメイヨシノは、色がこいーて品がないなあ」
今年は、息子の義男に遅い春が来た。結婚相手の娘さんとは秋には式を挙げ東京へ移り住む。
息子に婚約指輪をどうするのか聞いたら、妻の静子が指輪を譲るので、それをリフォームして使うのだという。
相手の家は結構な資産家で新たに買うと貧弱になってしまうのは避けたいという事だった。
当時宝石を扱う貿易会社にいた藤次郎は、縁故ではあったがそれでも大枚はたいてダイヤモンドの指輪を送った。
取引先だったオーストラリアのアーガイル鉱山から産出したピンクの色が濃い大粒のダイヤだった。
妻は最初ダイヤだとは思わず、ダイヤだと聞いて目を丸くして驚いたのを覚えている。
特別価格で買えたが、そうでなければ藤次郎にはあれほどの石は買えなかっただろう。
いまは閉山してしまったため、希少性が高くなり値は爆上がりしているようだ。
「あんまり見え張ってもしょうがないけどなあ」
「おじさん、こんにちは」 玄関から若い女性の声が聞こえた。
横浜の親戚のとこの留依ちゃんだった。
「ようお越し、久しぶりやなあ。今回は何の用で上洛したんかいな。」
「父さんの知り合いが大阪のミネラルショーに出展するんだって。それでね裕二朗おじさんの石をぜひ目玉商品として置きたいと拝み倒されて父さんが口利きしたんだけど、『展示写真を撮るなら和彦兄いのスタジオで』と裕二朗おじさんが言ったので撮影するサンプルもってきたの。2,3日泊めてね。」
和彦とは裕二朗の次男で写真家である。
小さいながらスタジオをもっていて関西ではジュエリーフォトグラファーとしてそこそこ名がしれている。
「魔法使いの石なら客寄せには文句なしやな。」
裕二朗は母方の親戚だ。昔宝石業界に関わっていたので裕二朗の評判はよく聞いて知っている。
「どうせなら、一緒にマドモアゼル・トメの魔女の館も出したらどうや。」
「おじさん、わたし占い師にはならないって言ってるでしょ。それにマドモアゼル・トメって何よ。
どうせなら“マドモアゼル・ルイ”でしょ。」
藤次郎は、飲んでいた京焼の湯吞茶碗を見てふと思いついたように言った。
「ちょうどお茶請けの菓子が切れてて近所のお菓子屋さんまでつきおうてくれへんか。」
すぐ近くのお菓子屋というその店は老舗のような趣がある和風建築の小さい店だった。
中にはいると、留依は明るいすっきりした白いカウンターの風情に面食らった。
「なにこれ、和菓子屋じゃあないの?」
どら焼きに見えたその菓子も抹茶とチョコのクリームを挟んだ洋菓子風。他もマカロンにあんずジャムやキンカンクリームといった和のテイストを全面にだしたものだった。
「ここは、古い実家の和菓子屋から暖簾分けした洋菓子と和菓子の融合をねらった新店舗や。店主は若い時から塩芳軒で修行してパリの“ル・コルドン・ブルー”で洋菓子の勉強したのち最近京都に戻ってきたんや。まだプレオープンみたいなもんや。」
留依はショーウインドウにある一つのお菓子に目がいった。それは桜色の「クリスタル・桜」と銘打った角ばったごつごつした物だった。
桜色の濃い透明な羊羹のような出来だが、留依にはなにか違和感があった。
「これ最初は春らしい名前できれいって言ってもらえるんだけど、人気なくてね。」
「味みてみないとなんとも言えないけど、野暮ったく見える。」
留依の一言に、じゃあとその場で出してくれたお菓子を二つに割って食べてみる。
「味はまあおいしいわ。でもこれクリスタルじゃないわ。」
「え?」
「クリスタルの真価は、こうするとわかるの。」
そういって留依は、お菓子に照明を当てて「ほら透け感が低いでしょ。」
光を当てると、断面は羊羹ぽい曇りが強調された。
「ピンクダイヤもピンクの濃い色が好まれるんじゃないの。薄くても透明感がある方が高級さがあるわ。」
「なるほど、桜色と言ってもウバ桜、山桜、ソメイヨシノ、色はいろいろあるわな。私の好きな御室桜は白うてもあれも桜色や。」
店主は、なにか思うところがあるようでじっと考え込んだあと「光をうけてこそジュエリーの輝きか」とつぶやき、挨拶もそこそこに奥へ引っ込んでいった。
藤次郎は、なにもいわず店をでた。
「もうすぐ、フランスのお師匠さんが日本にくるそうなんや。それで日本らしく「クリスタル・桜」をつくって出したんやけど評判がいまいちで頭抱えていたみたいなんや。」
「私も相談されたときになにか足りないと思ったが、いいアドバイスができなくてね。
いや、流石は「マドモアゼル・トメ」だ。」
「おじさん! ル・イ・です。フランスの王様と同じ ルイ!。」
一か月して京都新聞に“フランスのパティスリー界の至宝 MOF ○○氏も絶賛! 和菓子と洋菓子の融合「クリスタル・SAKURA」”の記事が載った。
SNSでも大評判で、店は連日売り切れとのことだ。
藤次郎は、店主が改良された「クリスタル・SAKURA」を最初に出してきた日のことをよく覚えている。
色は白に近くなり、LEDの照明光を浴びて以前より小ぶりだが透きとった中に桜の葉型の餡が小さくはいっている。
2つに割ると、断面がキラキラと光った。ザラメ上の粒が真ん中に仕込まれているのが光に反射してクリスタルのように輝いている。
「ええ出来や。」
「みんな藤次郎さんのおかげです。」
「いや、これも「白夜の魔法使い」の導く“縁(えにし)“なのかね。ちょうどあんたが暗い顔して悩んで鬱になっていることを聞いた後にタイミングよく裕二朗くんが留依を京都に呼び、あんたの悩みにヒントを与えた。でもそれを形にしたのはあんたの努力や。近所においしい店が増えて甘いもの好きの私もうれしい。」
藤次郎の手元には、過日の京都新聞の文化欄の写真付きの記事。フランスから来た○○氏と店主の肩を組んだ満面の笑顔の下に「クリスタルSAKURA」と共に光を浴びたホワイトウオーターのクリスタルが置かれていた。
【注】登場人物の名前や店名は架空のものであり、実在の人物、店舗とは全く関係がありません。


【誕生月石】
ここで登場する3月について
3月 誕生石 アクアマリン、サンゴ ・ 誕生守護石 ブルーレース
アクアマリンは、エメラルドと同じ「ベリル」鉱石の一種で淡いブルーの発色をもつ物を指します。水に由来するこの石は、ブラジルのサンタマリア鉱山で採掘されるものやモザンピーク産のサンタマリア・アフリカーナと呼ばれるマリンブルーのものが高品質が多いとされています。
誕生石を知りたい方は、こちらの参考サイトもどうぞ
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/
星座の石:3月20日までのうお座の星座石は”アクアマリン”、”モルガナイト”があります。後半の牡羊座の星座石は”ガーネット”、”ダイヤモンド”、”ルビー”、“サンゴ”があります。
3月 青い湖のほとりで ~第3話

夏の終わり、真紀は、湖畔で一人すわって泣いていた。
先日、3年付き合った太郎と破局しその時妊娠していたのに堕さざるをえなかった。太郎の家は裕福だった。付き合い初めにダイヤのネックレスもおくってくれるくらい。1ct(カラット)位のそれなりの大きさのダイヤモンド。真紀の幸せの象徴だった。
でも彼は二股をしていて、資産家のお嬢さんと婚約がきまると簡単に捨てられた。
湖畔の“縁 えにし”という名のジュエリーショップ。
「これ、ルービックジルコニアですよ。二酸化ジルコニウムで炭素でできたダイヤとは違います。いわゆる模造ダイヤとかでダイヤと偽って悪徳業者が販売したりするやつです。」
だまされていた。「私に見る目がなかったんだ。」
また、涙がでてきた。
ガラン、ガラン。
入ってきたのは、高校生くらいの麦わら帽子をかぶった女の子。
「おじさん、お父さんのお使い。頼まれていたサンゴだって。」
「おー、留依ちゃん。お使いご苦労様、遠いところご苦労だったね。」
店主は真紀の方を振り返ると、一緒に見るかい?と誘った。
箱を開けるとガラスケースにはいった見事なサンゴの木だった。
「知り合いの旅館が玄関に置くのに枝ぶりのいいサンゴを探していてねえ。サンゴは子孫繁栄、家庭円満の証でカップルやご家族連れが多い和風旅館にはぴったりだとぜひ見つけてくれって頼まれていたんだよ。」
「父さんがこれはめったにない一品って自慢してたからね。濃淡のピンクが鮮やかで気持ちが華やかになるわ。」
真紀の目にもそれは見事なサンゴだった。
「お客さん、ダイヤだけが宝石じゃない。サンゴは厳密には元生物だけど、宝石としても珍重されますね。
こちらにサンゴのネックレスもありますよ。小ぶりだけど、なかなかきれいでしょ。」
表にマリンブルー色のワンボックスがとまった。
ガランガラン、ドアベルをならして別の客が入ってきた。
「あー真治さん、いまお宅の旅館にあうサンゴが入ってきましたよ。」
「ほー、とてもいい品ですね。母さんが喜びそうだ。トメちゃんが持ってきてくれたの?」
真治は、近くの旅館の次男坊で近くで旅館を時々手伝いつつ、キャンプ場で仕事をしている。
この湖にきたときの定宿で家族とも何度もとまったことがあるから、真治とは顔見知り。
真治は、ふと真紀の方を見た。「お客さん、この近くにキャンプ場があるんです。お客さんも一度どう?。最近ソロチャンプ流行っているんすよ。」
「おい、真治くん。自分の旅館を進めるのが先だろう。それに若い娘さんに“ソロキャンプ”はないだろう。」
真治は、自分の言った言葉の意味に気づいて赤くなった。
「ごめんなさい。いまソロキャンプ流行っているんで、つい。カップルでも、グループでも楽しいですよ。」
「いいえ、いいんです。わたし彼氏いませんし。友達もそんないないから。」
「なら、トメちゃんに彼氏ができる石を選んでもらったら。こいつ本名は留依っていうんだけど、周りからは「石のことなら、宝石からパワーストーンまでトメちゃんに相談しろ。と言われるくらい。こいつの選ぶ石は本物だから。」
「真治さん、わたしパワーストーンや占いやらないって言ってるでしょ。」
「まあまあ。 お客さん。トメちゃんに涙の訳を話してみたら。誰かに話聞いてもらうって、気持ちが楽になるよ。」
真紀はびっくりした。真治が店に入ってきたとき、ほほに残る涙を見られていたようだ。
店主も「奥の席使っていいよ。彼女に話して気持ちが楽になるだけでも儲けものだよ。うちも話の流れでなにか買ってもらったらうれしいし 笑。」
冗談だといいながら、奥の席を真紀と留依にすすめた。「いまお茶持ってくるね。いいアッサムがあるからミルクティーにしてあげるよ。」
真紀は、自分が二股かけられ別れたこと、そのとき中絶したことまですべて留依に話した。
はじめてなのになぜかこの子には何でも話して問題ない…そんな気にさせる不思議な目をしている子だと感じた。店の中に漂うやさしい空気もそんな印象を後押ししたのかもしれない。
「でもお医者さんには、若いからまだ産めるって言われたんですよね?。改めてしあわせな家庭をつくるのに遅すぎることなんてないですよ。
・・・ねえ、時間があるなら真治さんがやってるキャンプ場にとまっていったら?バンガローもあるから何も持ってきてなくても一泊位していけるよ」
そういうと、留依は外の車のところにいた真治のところへ向かった。ちょうど店に届けに来た薪をかたずけて今帰ろうとしている。
「ねえ、真治兄い お客さんがバンガロー泊まりたいらしいけど空いている?」
「毎度あり(笑)。この季節は大丈夫。。。」
店に戻ると、真治は真紀に握手してきた。
「お客さん、虹色バンガローへようこそ 真治です。」
「真紀です。急ですいません。ご迷惑でなかったですか」
「客が減る時期だから、逆におお助かりですよ」
荷物はすこしだからというと、真治は車でバンガローまで送っていくと真紀を助手席にのせて走り去った。
遠ざかる空色の車をみながら、二人並んだまま店主の裕二朗は小さな声でぽつりと聞いてきた。
「珍しいね。君のほうから縁(えにし)をつくってあげるなんて。」
「おじさんこそ、わざわざ私に話を振ってきたでしょ。」
「なんかね、サンゴが呼んでいるような気がしたんだ。」
裕二朗は実はネットの石の世界では『白夜の魔法使い』と呼ばれる有名人だ。
裕二朗の売る石は縁を結ぶ神秘のパワーストーンと呼ばれ、縁結びの依頼やビジネス界の有名企業人からはいろいろな相談も受けることが多い。
ただ、「ホワイトウオーター」というネットショップ商売に限定していて、東京の自宅はアルバイトの子がいるだけのため、湖で実店舗をやっていることを知る人はほとんどいない。本人は、『静かな湖畔の森の影でカッコウの鳴き声をきいて過ごしたい』と何処かの歌のようなことを言いながら隠者を気取っている。
「おじさん、あの人3月生まれってよくわかったわね。さすが”魔法使い”と言われるだけはあるわ。」
「へえ、あの子3月生まれだったんだ。道理でサンゴが呼ぶわけだ。」
「あの子最後は笑顔で車で去っていったね。」
〇年後、真紀は真治からプロポーズされた。
その指に贈られたのはアクアマリンの指輪。その翌年アクアマリンの石言葉のとおり、真紀は母になった。
【注】登場人物の名前や店名は架空のものであり、実在の人物、店舗とは全く関係がありません。


【誕生月石】
ここで登場する3月について
3月 誕生石 アクアマリン、サンゴ ・ 誕生守護石 ブルーレース
アクアマリンは、エメラルドと同じ「ベリル」鉱石の一種で淡いブルーの発色をもつ物を指します。水に由来するこの石は、ブラジルのサンタマリア鉱山で採掘されるものやモザンピーク産のサンタマリア・アフリカーナと呼ばれるマリンブルーのものが高品質が多いとされています。
誕生石を知りたい方は、こちらの参考サイトもどうぞ
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/
星座の石:3月20日までのうお座の星座石は”アクアマリン”、”モルガナイト”があります。後半の牡羊座の星座石は”ガーネット”、”ダイヤモンド”、”ルビー”、“サンゴ”があります。
2月に降る雨、紫の慈雨

夕子は、先週末の夜も飲んだくれていた。
最近、コンペで他社に今一歩およばず契約を逃してやけ酒を飲むことが多くなった。傘もなくずぶ濡れで帰ってきた日もあった。
「向かないのかな」
そうそう夕子は、日本橋にある中堅の広告会社でWEBデザイナーをしている。
勤め始めた頃は、希望に満ちて契約もそこそことっていたが、最近は頭打ちで才能の限界を感じ始めた。
今日は、ジュエリー関係のクライアントのところに新作発表広告のプレゼンで横浜に来ていた。
でもクライアントの評価はいまいちで、今度のコンペ結果も怪しい。
今日も雨。小雨であっても2月の寒い日にはつらい。
元町を歩いていて、ふと一軒のジュエリーショップが目にとまった。ショーケースの品につられてガラスのドアを開けて誘われるように入ってみた。
カランカラン、かわいい鈴の音がして店内にはいるときれいな工芸品が陳列されている。
中には、かわいい猫や犬、ロボットなどをモチーフにしたペンダントが展示されている。
「いらっしゃいませ」まだ若い女の子の店員が笑顔で接客する。
買うつもりはなかったが、夕子の目に奥にある小さな七福神のアメジストが飛び込んできた。
掌に乗るサイズで、かわいい。
「きれいでしょう?」
確かに澄んだ紫の色と透明な部分のコントラストがきれいな置物だ。
「ばら売りもできますよ」
中でも琵琶を弾く弁財天がほっちゃりしてかわいい。
やや高めだったが、何となく惹かれるものがあった。
「お姉さん何月生まれですか?」
「2月よ」
「でしたら、誕生石ですね。アメジスト。」
「ここはパワーストーンのお店なの?」
「いいえ、特にパワーストーンを扱っているわけではないんです。あなたに合う石でブレスレットを作るとかもやってないし、占いもしてません。でもこんな置物をおいているからそう思って入ってこられるお客さん多いです。」
改めて少女をしげしげと眺めた。どことなく横浜風の異国情緒を感じる神秘的な雰囲気を感じる。
「でもあなた、占いやったら当たりそうな雰囲気あるわよ」
「そうですか。わたし本名は留依なんですけど、留めるに依りそうって漢字だからみんなからは“トメとかトメちゃん”って言われているんです。全然そんなエキゾチックなの似合わないですよ。」
「ふふ、変わっているわね。私は夕子って平凡な名前だから留依(ルイ)なんてあこがれるわ。」
「でも、トメですから。」
二人してクスクスわらったあと、夕子はふと質問してみた。
「ねえ、石って合わない石もつと不幸になるとかいうじゃない?なんとなく買うの怖いわ。
まあ、いま仕事あまりうまくいってないからこれ以上悪くなるとかないだろうけど。」
「お姉さん、不幸を石の性にしたら石がかわいそうです。石には個性があるけど、こいつを不幸にしてやろうと思っている石なんてありません。逆に私を幸せにしろ、そうじゃなきゃお前は悪い石だと思いを押し付けてしまうのも、かわいそうです。石をもっと見てあげてください。利害で見るのでなく、私の好きな色、素敵な形とか透明感、模様がいいわと感じて買ってもらうと石もうれしいですよ。
そんな風にみてあげると、石もインスピレーションや感謝を伝えてきますよ。」
そんな話を聞いてから弁財天の置物をみていると、なにか微笑んでくれたように感じた。
「ねえ、わたしデザインで行き詰っていて、悩んでいるの。あなたをみているとなにか落ち着いてくる。ねえ、私のところに来ない?」
なんだろう、心の琴線に触れるというのか、いままで直観なんて感じたことがなかったのになにか引っかかるものを感じた。
「これ買います。」
「ありがとうございます。」
会計をすると、少女は小さな紙を渡してきた。
「うち、ご購入いただいた石の石言葉を書いてお渡ししているんです。石と人ってマッチングアプリみたいなものですから、この子のタイプも少し知ってもらいたくって。」
書かれた紙には、こう書かれていた。
“アメジスト(紫水晶) 石言葉は「心の平和・癒し、直観を信じて」 たまには胸に押し当てて深呼吸してあげて from Rui”
夕子が大口の契約をとったのは、それから2か月後のことだった。
その日も雨だった。でも夕子には青い街灯に照らされた雨は幸せの紫に光ってた。
【注】登場人物の名前や店名は架空のものであり、実在の人物、店舗とは全く関係がありません。


【誕生月石】
ここで登場する2月について
2月 誕生石・誕生守護石 アメジスト
アメジストは、ホテルや旅館、石屋さんなどでドームや彫刻された大型のものも多く飾られています。
わたしは4ct程度のルースしか手元にないですが、実家には全面紫の
濃い細工の見事な七福神像が置かれています。
誕生石を知りたい方は、こちらの参考サイトもどうぞ
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/
星座の石:2月前半にあたる、みずがめ座の星座石は”アメジスト”、後半のうお座の星座石は”アクアマリン”、”モルガナイト”があります。
1月の(柘榴)ザクロ

木石留依は中学の頃は友達からよく「トメ」、「トメちゃん」と呼ばれた。
周りの子が漢字の一文字目を見て、“うちのおばあちゃんと同じ“、とからかったのが最初で、いつしか本名のルイでなくみんなそう呼ぶようになった。
母の依子は“お母さんの実家の家紋はザクロの紋やったんよ。いまはみんな亡くなってしもて、だあれもいないんで使う人はいなくなってしまったけど。なんか残したかったんよ。実家のザクロの木はなくなってしもたけど。”
以前、ぽつりと母が漏らしたことだ。
それまでは、“あんたは1月うまれやから誕生石のガーネットと私の名前からとった”、なんて聞かされていたけどね。
私の家は、横浜の中華街近くで小さな宝石商をしている。だから小さい時からいろいろな石は見てきた。
私の1月生まれ。誕生石は、ガーネット。和名は柘榴石。ガーネットってとっても種類が多い石で大別するとAl(アルミニウム)系とCa(カルシウム)系に分かれる。
誕生石の由来になったAl系は赤やオレンジ、紫系。対するCa系は、緑系の色が多い。
古代エジプトではファラオの赤い石はガーネットだったと言われる。
”石屋のトメちゃん”だった私は、自然と石に詳しくなって周りから相談を受けるようになっていた。
いわゆる“パワーストーン“のことや“彼とうまくいく恋愛にきく石は何“といった事から”占い“まで。
なんか宝石商とパワーストーン屋を勘違いしている人がやたらと多い。
宝石とパワーストーンの業界は基本別の業界だ。
宝石は基本ブランド品だ。美しさや希少性が価値につながる。高価で投機にもなる。パワーストーンは、エネルギーというほんとかウソかわからないものを対象としている。
宝石として扱われるものもあるが、それ以外の石の方が圧倒的に多くある。
三大パワーストーンと言われる、スギライト、チャロアイト、ラリマーなんてホント模様石で透明なクリスタルな宝石とは別の世界の石だ。
誕生月で石を選ぶときパワーストーンとしての意味を考える人もいるが、恋愛運、仕事運、金運といった目的でパワーストーンを選ぶ方が多いだろう。
「トメちゃん、今度アクセサリー買いたいから浅草橋まで付き合って。」
学校の帰り道、若宮花から声をかけられた。花は私と同じシワシワネーム仲間だ。でも最近の若手女優に同じハナという名なの子もいるし、ダンスも習っていてクラスの子に人気がある。同じシワシワな呼び方の私とは違うのだ。
「石屋の子に商売敵の店についていけなんて、いい度胸じゃん。」
「だってトメちゃんの店高くて私には分不相応だから」
「わかった。マックでゆるす。でどんなのが欲しいの?」
「わたし緑色の石が好きだから、そんな色のピアスやネックレスがいいな。
エメラルドなんて高くて買えないからそれ以外で。」
「エメラルドでも宝石クラスでなければ手ごろな値段であるけれどね。
そうね、ペリドットみたいな薄緑な色も考えたけど、エメラルドを出してくるくらいだからもっと濃い緑色がいいのね。」
「白に映える緑がいいわ。」
今度小さな舞台で行われるコンテストで白い衣装を着るらしく、はっきりした緑のアクセサリーを身に着けたいらしい。
「だったら、ガーネットから探すのもいいかも」
「え、ガーネットって赤い色でしょ?」
「ガーネットでもグロシュラーと呼ばれる緑の石があるのよ。エメラルドグリーンなものもあるから
探せば、ピアスに仕立てられるものも見つかるかも。」
浅草橋の裏通り、ひっそりとたたずむ神社に先にお参りにいく。
「トメちゃん、結構信心深いのね。うちのおばあちゃんみたい。」
「わたしが、ルイなの忘れてない? インバウンドで日本にきている神社好きなフランス人みたいに宗教には敏感なの。」
「それじゃ観光できてる外国人みたいじゃん。やっぱり、宝石商よりパワーストーンショップの店長が似合ってるよ 笑」
「石って出会いなのよ。出会いを祈るは結構ガチよ。」
神様今日はいい買い物できますように・・・ この辺りにはいっぱいあるストーンショップへ向かうのであった。
数時間後:
「あーいっぱい歩いたね。」
浅草橋には、マックがないのでモスバーガーに入ってお茶していた。
テーブルの上には、かわいい小さな緑の石が3つつながったピアスとおそろいの色をした石の周りを透明な細かい石で縁取ったネックレスがあった。
「よかったね。グリーンガーネットだよ。情熱と勝利を意味する石。きっと今度のダンスコンテストはうまくいくわ。」
「ありがとう! 留依。これで私もっとがんばれる。5月生まれの私には誕生石でないのがちょっと残念だけど。」
留依はちょっと考えてからこう言った。
「ねえ、花。石には誕生日石っていうものもあるの。あなたの誕生日”5月30日”の誕生石は、実はグリーンガーネットなのよ。つまりこのアクセサリーはあなたのバースデーストーンってわけ。」
花は、大きな目をもっとまるくして留依を見つめた。
「だから、あなた緑の石がいいっていったときグリーンガーネットを探しましょうっていったの?」
留依は何もいわず、花の手を握って微笑んだ。花もただ嬉しそうに手を握り返した。
誕生日をしっかり覚えていてくれた親友の手を。
「自分は石屋の子であって、パワーストーンのジュエリーショップの店員じゃない。石に神秘を求めたり霊験を求めるのは少し違う」、
と、こんな話は普段はしてくれないこの子だが、石は大好きなんだ。
心の中が幸せで満たされていくのを花は感じた。
「やっぱり、この子と友達でよかった。」
― きっと今度のコンテストはうまくいく・・・。
【注】登場人物の名前や店名は架空のものであり、実在の人物、店舗とは全く関係がありません。


【誕生月石】
ここでは、登場する1月と5月について
1月 誕生石 ガーネット 1月 誕生守護石 オニキス
5月 誕生石 エメラルド ヒスイ 5月 誕生守護石 マラカイト
各誕生月に対応する石が選定されているのはよく知られてます。
その月毎に「誕生守護石」も対で存在します。
さらには、誕生日ごとにも対応する石を選んだものがあります。
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/
因みに星座の石もあって、登場人物の若宮花(ふたご座)の星座石には”アゲート”、”ブルーレース”、”ラリマー”などがあります。